叱る親は子どもの勇気をくじく|アドラー心理学に学ぶ子育ての本質
「子どもをしっかり育てるには叱ることが大切だ」――そんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。
確かに叱ることで一時的に行動を止めたり、言うことを聞かせることはできます。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、著書『子どもの教育』の中でこう警告しています。
厳しく育てても、甘やかして育ててもいけない。
親がするべきことは、子どもを理解し、問題にぶつかったときにサポートし、勇気づけることである。
つまり、叱ることで子どもをコントロールするのではなく、勇気づけによって成長を支えることが本当の子育てなのです。
叱ることが子どもに与える影響
叱られた子どもは、その瞬間に「やめよう」と思うかもしれません。
しかしその背景には次のような感情が残ります。
- 「自分はダメな人間だ」という自己否定感
- 「怒られないために従う」という消極的な行動パターン
- 親に対する恐怖や反発心
結果的に、子どもは勇気を失い、挑戦を避けるようになります。
叱ることで行動は変わったように見えても、内面の成長はむしろ妨げられているのです。
厳しさでも甘やかしでもない「理解」
アドラー心理学では、子育てにおいて 「厳しさ」でも「甘やかし」でもない第3の道 を提唱します。
それは 子どもを理解すること です。
- なぜその行動をしたのか?
- どんな目的が隠れているのか?
- 子どもは何を伝えようとしているのか?
こうして子どもの内面を理解しようとする姿勢こそが、親子の信頼関係を育て、子どもの健全な成長につながります。
勇気づけが子どもを成長させる
では、叱るのではなく「勇気づける」ために、親は何をすればよいのでしょうか。
- 行動ではなく努力に注目する
→ 「結果はどうあれ、挑戦したのは素晴らしい」と伝える。 - 問題に直面したときにサポートする
→ 答えを与えるのではなく、「どうすれば解けるかな?」と一緒に考える。 - 共同体感覚を育てる
→ 「あなたの行動は家族や友達にどう役立つかな?」と問いかける。 - 信頼を示す
→ 「あなたならできる」と伝え、子どもの自己信頼を後押しする。
親が避けるべきこと
勇気づけとは反対に、子どもの心をくじく言動があります。
- 「どうしてそんなこともできないの?」
- 「お兄ちゃん(お姉ちゃん)はできるのに」
- 「もう知らない、勝手にしなさい」
こうした言葉は子どもを傷つけ、「自分は役に立たない存在だ」と思わせてしまいます。
大人にも必要な「勇気づけ」
アドラー心理学の勇気づけは、子どもだけでなく大人にも当てはまります。
職場で部下や同僚を叱りつけても、信頼関係は育ちません。
大人同士でも「理解しよう」「勇気づけよう」という姿勢が、より良い人間関係を築くのです。
まとめ
「叱ること」が子育ての中心になってしまうと、子どもは勇気を失い、挑戦を避けるようになります。
アドラー心理学が示すのは、厳しさや甘やかしではなく「理解」と「勇気づけ」に基づく子育てです。
親が子どもを理解し、困難に直面したときに支え、勇気づけを行うことで、子どもは共同体感覚を育み、社会に貢献できる人間へと成長していきます。
