あなたが見ているのは「事実」ではありません。脳が勝手に編集した「偏見」です
「普通に考えたら、こうするのが当たり前でしょう?」 「客観的に見て、あの人のやり方は間違っている」
会議や家庭での話し合いで、こんなふうに思ったことはありませんか? 自分は感情的にならず、冷静に「事実」を見ているつもりなのに、なぜか相手と話が噛み合わない……。
実は、その「客観的に見て」という感覚こそが、最大の落とし穴かもしれません。
この記事では、『7つの習慣』で語られる**「自覚(自分がどう見ているかを知る力)」**について解説します。 医療の世界でも、診断する医師自身のバイアス(思い込み)に気づいていないと、誤診を招くことがあります。
結論をお伝えします。 私たちは誰一人として、世界をあるがままに見てはいません。 自分の経験という「色眼鏡」越しに見ているに過ぎないのです。 この事実に気づくだけで、あなたの人間関係は驚くほどスムーズになります。
「自分は客観的だ」という最大の勘違い
私たちは日常生活で、自分の目に見えるものを「現実そのもの」だと信じて疑いません。 しかし、心理学的には、私たちは現実を見ているのではなく、**「自分の脳が解釈した世界」**を見ています。
黄色いサングラスをかけていませんか?
想像してみてください。あなたが生まれた時からずっと「黄色いレンズのサングラス」をかけていたとします。 あなたにとって、世界は「黄色いもの」ですよね。 もし隣の人が「いや、世界は青いよ(彼は青いサングラスをかけている)」と言ったらどう思いますか?
「こいつはおかしい。客観的に見て世界は黄色なのに!」と怒るでしょう。
人間関係のトラブルの9割はこれです。 自分なりの見方(主観)を、客観的な事実だと勘違いしていることが原因なのです。
相手を知る前に、まず「自分」を知れ
『7つの習慣』ではこう説かれています。 「自分が自分自身をどう見ているか、他者をどう見ているかを自覚していなければ、他者が世界をどう見ているかわからない」
他人の気持ちがわからないと嘆く人は、実は「他人のこと」を見ていません。 「自分の色眼鏡」の存在に気づいていないだけなのです。
人間だけが持つ能力「自覚(メタ認知)」
動物は「本能」に従って行動しますが、人間には**「自覚(Self-Awareness)」**という能力があります。 これは、幽体離脱のように、自分の行動や思考を天井から眺める能力のことです。
- 自覚がない状態: 「アイツの態度がムカつく!」(感情に支配されている)
- 自覚がある状態: 「おや? 私は今、彼の態度にイライラしているな。なぜだ? 昔の苦手な上司に似ているから、勝手に重ね合わせているのかも?」
このように、**自分自身を客観的に観察すること(メタ認知)**ができて初めて、他人のサングラスの色(視点)を理解する余裕が生まれます。
今日からできる「色眼鏡」を外す練習
では、どうすれば自分のバイアス(思い込み)に気づけるのでしょうか? 簡単なトレーニング方法をご紹介します。
- 「という見方もできる」と付け加える 「彼は怠けている」と思った瞬間、「…という見方もできる(が、別の見方もあるかも)」と心の中で付け加えてください。断定を避けるだけで、視野が広がります。
- 感情が動いた時こそチャンス イラッとしたり、モヤッとしたりした時は、「自分のどんなパラダイム(色眼鏡)が反応したんだ?」と自問する癖をつけましょう。相手ではなく、自分の内側に原因を探すのです。
まとめ・アクションプラン
今回の記事の要点をまとめます。
- 私たちは「客観的」だと思っているが、実は無意識に**自分なりの色眼鏡(パラダイム)**で世界を見ている。
- 自分のレンズ(偏見)を自覚しない限り、相手が世界をどう見ているかを本当に理解することはできない。
- **「自覚(メタ認知)」**の力を鍛え、自分の思考を観察することで、独りよがりな判断から抜け出せる。
【Next Action:読者が次に取るべき行動】
次に誰かと意見が対立した時、相手を論破しようとする前に、一瞬だけ立ち止まってこう考えてみてください。 「もし、私の見方の方が偏っているとしたら?」
この謙虚な問いかけが、対立を「発見」に変えてくれます。
自分の思考のクセを知り、よりクリアな視点で人生を見つめ直したい方は、ぜひ『7つの習慣』や、認知科学(メタ認知)に関する書籍を手に取ってみてください。 「世界って、こんなに鮮やかだったのか」と驚くはずです。
