「何も学ばず、安逸をむさぼるのは死に等しい――生ける者の墓場である」
これは古代ローマの哲学者セネカが『倫理書簡集』で残した言葉です。彼は、人生において休息や余暇は必要だと認めつつも、それを「無意味な怠惰」で終わらせてはならないと警告しました。
休暇をとることは大切だが…
現代社会に生きる私たちも、日々仕事や家事に追われています。時には休暇をとり、心身をリフレッシュすることは欠かせません。旅行に出かけるのも、海辺でのんびりするのも良いでしょう。
しかし、セネカは「ただ何もしない時間」を休暇とは呼びません。むしろ、休暇とは学びを深める機会であり、自分自身を鍛えるための時間であるべきだと説きます。
ビーチにも本を携えて
セネカが勧めるのは、休暇にも「学び」を持ち込むことです。例えば、ビーチに行くならお気に入りの本を一冊携える。できれば軽薄な娯楽本ではなく、思索を深めてくれる本。
詩人になったつもりで、風景を観察し、自然に触れ、宇宙における自分の存在を考える。そうすれば、ただの休暇が「人生を豊かにする時間」に変わります。
引退後の余暇も同じ
セネカの言葉は、引退後の人生にも当てはまります。
「たっぷり金を稼いで早めに引退したい」という目標を持つ人もいるでしょう。それ自体は悪いことではありません。しかし、引退後に待っているのが「一日中ごろごろする生活」や「無意味にテレビを見続ける日々」だとしたら、それは自由でも幸せでもありません。
セネカが説くのは、引退の本来の目的は「本当にやりたいことに打ち込むため」であるということです。学び、創造、他者への貢献――そうした活動に余暇を使うことで、人生は最後まで意味を持ち続けます。
現代での実践ポイント
- 休暇に学びを取り入れる
旅行に行くときは、その土地の歴史や文化を知るための本を読む。リゾート地でもただ寝転ぶだけでなく、自然や人々を観察して新しい気づきを得る。 - 毎日の中に小さな余暇を設ける
通勤時間や休憩時間をSNSではなく読書や思考に充てることで、わずかな時間でも学びを積み重ねられる。 - 引退のための準備を「学び」とセットにする
将来やりたいことを今から少しずつ学び、経験しておく。そうすれば、引退後にすぐに打ち込める「生きがい」となる。
余暇の使い方が人生を決める
セネカは「学びのない余暇は死に等しい」と厳しく断言しました。しかしそれは、私たちに「怠けるな」と叱るためではなく、「余暇こそ人生を豊かにする最大のチャンスだ」と教えるためです。
- 休暇は怠惰ではなく、心を養う時間
- 引退は暇つぶしではなく、本当にやりたいことに集中するための時期
- 学び続けることで、人生は最後まで成長を続けられる
私たちが余暇をどう使うかによって、人生の質そのものが変わってくるのです。