名誉は分かち合い、責任は引き受ける──『菜根譚』に学ぶ真のリーダーシップ
名誉を独り占めすると、恨みを生む
『菜根譚』にはこう書かれています。
「名誉は、独り占めしてはならない。自分を支えてくれた人たちにも分け与えるべきだ。」
成果や成功を手にしたとき、人はつい「自分の力でやり遂げた」と思いがちです。
しかし、どんな成果も、見えないところで支えてくれた人がいるからこそ成り立っています。
たとえば、上司のサポート、同僚の協力、家族の理解。
それらがなければ、結果は決して生まれません。
にもかかわらず、名誉を独り占めしてしまえば、周囲の人の心は離れていきます。
結果的に、「あの人は自分ばかり良い顔をする」と不信感を買うことになりかねません。
つまり、名誉の独占は、一瞬の満足と引き換えに信頼を失う行為なのです。
成功を「分け与える」人が信頼される
本当に尊敬される人は、成功の光を独り占めしません。
むしろ、自分の周りに光を分け与えます。
「〇〇さんのおかげでうまくいきました」
「みんながいたからできたことです」
そんな一言で、周囲の心は温まります。
名誉を分け合うことは、単なる謙遜ではなく、人の心を動かすリーダーシップの本質です。
また、分け与えることで相手のモチベーションも高まり、チーム全体の力が増していきます。
つまり、名誉を分けることは“損”ではなく、“長期的な投資”なのです。
汚名を他人に押しつけない勇気
『菜根譚』はもう一つの側面も語ります。
「汚名をすべて他人にかぶせてはならない。その一部でも自分が引き受けることで、人として磨かれる。」
うまくいかなかったとき、責任を他人に押しつけたくなるのが人の常。
しかし、失敗をすべて周囲のせいにしていては、誰からも信頼されません。
逆に、自分が一部でも責任を引き受ければ、その姿勢が人を動かします。
「この人のために、次はがんばろう」と思わせるのです。
名誉は分け、汚名は引き受ける。
このバランスこそ、人間としての器を大きくする道です。
謙虚さと責任感の両立が人格を磨く
名誉を分かち合うことは「謙虚さ」の表れであり、
汚名を引き受けることは「責任感」の証です。
この両方を実践できる人は、自然と周囲から信頼を得ます。
逆に、成果だけを取って責任を逃れる人は、一時的に評価されても、長続きしません。
菜根譚が伝えたいのは、**「謙虚と誠実こそが、名誉よりも価値がある」**という普遍的な真理です。
現代の職場に活かす「名誉の分け方」
- 成果を語るときは、チームの力を強調する
「私が」ではなく「私たちが」という言葉を使うだけで、印象は変わります。 - 表では称え、裏では感謝する
周囲の支えに感謝を伝える習慣を持つ。これは信頼を深める最良の方法です。 - 失敗は、まず自分の責任として受け止める
「部下が悪い」「状況が悪かった」と言い訳するより、
「自分の指導不足だった」と認めるほうが、周囲に誠実さが伝わります。
「名誉」と「汚名」の扱い方が人を決める
成功のときに見せる顔よりも、
失敗のときに見せる姿こそ、その人の本質を映します。
名誉を分け与える人は、周囲に光を届ける人。
汚名を引き受ける人は、自分を磨き続ける人。
この両方を実践できる人こそ、本当の意味での“人徳者”であり、
組織や社会において信頼される存在です。
まとめ:名誉は「共に喜び」、汚名は「共に背負う」
『菜根譚』のこの一節には、
「謙虚に喜びを分け、誠実に責任を取れ」という普遍の教えが込められています。
名誉を独り占めせず、汚名を他人に押しつけない。
それは、単なる倫理ではなく、人生を豊かにする智慧です。
あなたの周りの人たちと、成果も、苦労も、分かち合う。
そのとき初めて、“信頼”という名誉が自然とあなたに返ってくるのです。
