人格が何より君を物語る
古代ローマのストア派哲学者、ムソニウス・ルフスは次のように述べています。
「哲学とは見せびらかすためのものではない。必要なことに注意し、いつも心に留めていること、それこそが哲学というものだ」
この言葉は、哲学を「知識」や「教養」として語るのではなく、日常の行動や態度そのものとして生きよ、という教えです。
修道士が修道服を着ているように、司祭には祭服が、銀行員には高価なスーツやアタッシュケースがあります。制服や肩書きは、その人の立場を示す目印になります。
しかし、ストア派にはそうした「制服」はありません。外見や話し方からストア派の哲学者を見分けることはできません。唯一の手がかりは、その人の人格です。
外見ではなく「人格」で示す生き方
現代社会では「見た目」や「肩書き」が重視されがちです。名刺に書かれた肩書きや、SNSに並ぶ自己紹介文は、いわば「現代の制服」と言えるでしょう。
けれども、ストア派の教えは私たちに問いかけます。
「あなたの行動は、その肩書きや言葉に見合ったものだろうか?」
例えば、誠実さを口にする人が裏で不誠実な態度をとっていれば、その言葉に価値はありません。逆に、何も語らずとも、日々の小さな行動が誠実さを示していれば、その人の人格が雄弁に語ります。
ストア派哲学の実践:3つのポイント
ストア派の教えを、現代の日常に取り入れる具体的な方法を紹介します。
1. 行動を通して価値観を示す
「正直であれ」「勤勉であれ」と言うよりも、実際にそのように振る舞うことが重要です。口で語るのは簡単ですが、行動に移すときに人格が試されます。
2. 他者の評価よりも自分の基準を持つ
「どう見られるか」を気にしすぎると、外見や肩書きに頼りがちになります。ストア派は、自分の内的基準を持ち、それに忠実に生きることを大切にします。
3. 小さな場面でこそ哲学を実践する
ストア派にとって哲学は特別な場面で使うものではありません。怒りを覚えたとき、困難に直面したとき、あるいは誰も見ていない場面での小さな行動にこそ、人格と哲学が現れます。
現代を生きる私たちへのメッセージ
SNSや肩書きで自分を飾ることが容易な今だからこそ、ストア派の「人格こそがすべてを語る」というメッセージは力を持ちます。
見せかけではなく、日常の小さな行動に哲学を生かすこと。
それこそが「本当に生きた哲学」なのだと、ムソニウス・ルフスは語りかけています。
まとめ
ストア派の人を見分ける唯一の方法は、その人格です。
外見や肩書きではなく、日々の行動そのものが哲学を語ります。
私たちもまた、自分の言葉や見た目ではなく、人格を通じて「自分らしさ」を示していきたいものです。