フレームワークを崇拝するのはもうやめよう──MECE至上主義から自由になるためのビジネス書まとめ
フレームワークを捨てよう──MECE至上主義の限界
前章では「MECEで構造化せよ」「ロジックツリーで分解せよ」というコンサル的思考の話を紹介した。
しかし今回は、打って変わって 「フレームワークから自由になれ」という逆張りの教えである。
「矛盾しているのでは?」と思った人は、すでにフレームワークに毒されている。
論理で世界を切り刻み続けるその発想こそ、いったん捨て去るべきらしい。
MECEは“正しくても害になる”──細かすぎる整理の落とし穴
『超・箇条書き』の著者・杉野幹人氏は、あれほどMECEを推奨するコンサル界にもかかわらず、こう警告する。
MECEにこだわりすぎると、細かく伝えすぎてしまう。
たしかに、プレゼンの場で
「網羅的に整理しておりますので、項目は12個あります」
などと言われても、完全に地獄である。
だからこそ、伝えるときには “あえて崩す” くらいでちょうどいいという。
伝える時には、敢えて「MECE崩し」をしたほうがよい。
この視点で振り返れば、居酒屋のメニューがMECEでないのは、
「客に料理を選ばせるための親切設計」だった可能性すらある。
僕がこれまで居酒屋で
「ここ、カテゴリの切り方がMECEじゃないね」
などと指摘して友だちが離れていったのも、
あれは僕が間違っていたのかもしれない(多分そう)。
フレームワークは“抽象的なゴミ箱”にもなる
さらに容赦ないのが『最強の働き方』(ムーギー・キム)。
MECEもフレームワークも、使い方を間違えれば「抽象的で退屈な使い古されたゴミ箱」である。
語彙が辛辣すぎる。
そして彼がもっとも嫌っているのは、コンサル用語を振り回して悦に浸るタイプである。
「理由は3点ありまして……」とロジカルぶった話し方をする二流が多すぎる。
この「理由は3点」が前章で紹介したガバニングそのものだ。
褒めていたものを別の本では「二流の象徴」とバッサリ。
ビジネス書同士の内ゲバである。
ムーギー氏の主張を要約するとこうだ。
- フレームワークに頼りすぎると、
“情熱のない論理バカ” になる - 人を動かすのはロジックではなく感情だ
- だからフレームワークはほどほどにしろ
筋は通っている。
では、コンサルかぶれ上司に遭遇したら?
ここまでは分かる。
しかし、ムーギー氏の“実践的アドバイス”は急に跳ねる。
MECEがどうこうとうるさい上司には、「怒りの鉄拳制裁」を食らわせようではないか。
突然の暴力肯定。
「食らわせようではないか」じゃない。
こっちは会社員だ。食らわせた瞬間にキャリアが終わる。
冷静にMECEで反論するとこうだ。
鉄拳制裁を食らわせてはいけない理由(MECE版)
- 上司との関係が破綻する
- 懲戒を受ける可能性が高い
- 刑事事件として扱われるリスクがある
以上です。
ロジックツリーも引かずに説明できたので、コンサル上司も納得してくれるだろう。
フレームワーク信者にならず、フレームワーク嫌いにもならない
ここまでの教えをまとめると、こういうことだ。
- MECEやロジックツリーは便利だが、伝える場では逆効果のこともある
- フレームワークを使いこなしているつもりで、ただの“論理バカ”にならないようにしよう
- コンサルかぶれ上司は鬱陶しいが、鉄拳制裁はやめよう
結局のところ、
フレームワークは“使うもの”であって“崇拝するもの”ではない
ということだ。
MECE至上主義に疲れた人も、MECEを憎む人も、
どちらも“ほどほど”が一番らしい。
