『高市内閣と維新連立に見る政治のリアル』
尊敬と批判は両立する
高市早苗総理大臣を、政治家として深く尊敬している。
その上で、「自由民主党は消滅するべき」と、心から思っている。
この二つの感情は矛盾しない。政治家個人と政党組織は別であり、組織の老朽化が進めば、優れたリーダーもその枠内では動けなくなるからだ。
誰もが間違えてきた三十年
過去の発言を取り上げて批判する人は多いが、この三十年、誤らなかった人などいない。
経済政策、財政論、貨幣論——どの分野でも多くの専門家が迷い、錯覚し、修正を重ねてきた。
かつて「公共事業はムダ」「公務員は多すぎる」「農協が悪い」といった言説に、多くの人が共鳴した。
だが、それらは事実よりも感情を煽る“ルサンチマン・プロパガンダ”に過ぎなかった。
それに一度も惑わされなかった人が、果たしてどれほどいるだろうか。
連立の妙と政治的均衡
今回の自民党と維新の連立には、短期的な政治的妙味がある。
選挙区調整ができず、解散総選挙に踏み切りにくい。
さらに、公明党との関係が切れたことで、解散リスクは一層小さくなった。
結果として、高市内閣は安定しやすくなったといえる。
維新が強硬に唱える政策も、現実味が乏しいため、政権の根幹を揺るがすことはない。
維新という不思議な存在
「大阪都構想を前提とした副首都構想」「企業団体献金の廃止」「国会議員定数の削減」。
どれも実現性に乏しい。
特に「議員定数削減」は、事実に基づかない議論の典型だ。
人口十万人あたりの議員数で見れば、日本は決して多くない。
数字を無視した“改革ごっこ”に過ぎないといえる。
政治は、皮肉と現実のあいだで
とはいえ、この“意味不明な政策”を掲げる維新との連立が、自民党の延命につながるのもまた現実。
皮肉だが、政権安定のためには悪くない選択だ。
自民党が単独で勝利していたら、人気を背景に勢いづき、再び慢心が広がっていたかもしれない。
今の日本政治に必要なのは、ほどよい緊張感と、現実を見据えた冷静さである。
高市内閣は、そのバランスを保つ象徴的な存在といえるのではないか。
