世界最高の話し方? 小手先テク? ビジネス書100冊読むと「話し方」は真逆の教えだらけだった
「話し方で人を動かしたい」という永遠の悩み
ビジネス書の世界では「話し方」本が絶えない。
理由は明白で、みんな “上手く話して、相手を動かしたい” からだ。
そして例によって、この領域も 極端な本が山ほどある。
ここでは、100冊読んで分かった話し方本の“カオス”をまとめていく。
世界最高すぎる本『世界最高の話し方』
まずはインパクト最強のこちら。
▼正式タイトル
『世界最高の話し方
1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!
「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』
強すぎる。
タイトルだけで胸筋が盛り上がっている。
▼著者の肩書き
エグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト
これを名刺で渡されても「ハイパーメディアクリエイター的なやつ〜!」とツッコんではいけない。
著者はボケていない。
▼前書きもムキムキ
世界のスーパーエリートに学び、「伝説の家庭教師」として、
トップリーダーだけに伝授してきた“最強方程式”を紹介しています。
全部太字で書いてある。
ここまでくると本自体がベンチプレスできそうだ。
世界最高の“最強方程式”=AHAの法則
紹介されているテクニックのひとつが「AHAの法則」。
▼ア行とハ行の感嘆詞で感情を読む
【ア行】
- あっ(気づき)
- いいね(賞賛)
- うんうん(納得)
- えーっ(驚き)
- おー!(喜び)
【ハ行】
- はーっ(感心)
- ひいっ!(恐怖)
- ふーん(嫌悪)
- へえ〜(意外性)
- ほ〜(感嘆)
相手からこの反応が出ればOK。
つまり、「感嘆詞を引き出せる話=感情を動かす話」らしい。
なお、僕は著者の肩書きを見て即「あっ(気づき)」となった。
著者は自分自身の肩書きでAHAの法則を発動させていたのかもしれない。
そして、心理テクのデジャヴが始まる
次に読んだのが『「いい質問」が人を動かす』。
▼単純接触効果
人は、よく知っているものに好意を抱きやすい。
知ってるなぁ。
▼小さなイエス
小さな承諾を繰り返させることで、大きな承諾を得る。
知ってるなぁ。
▼感想
「知ってるなぁ」しか出てこない。
デジャヴの無限ループである。
小手先テクを真っ向否定する本が登場
そんな中、空気を切り裂くように現れたのが
『「言葉にできる」は武器になる。』。
テクニックの洪水に対し、著者はこう言い切る。
テクニックで口車に乗せようとすること自体が失礼。
言葉は思考の上澄みに過ぎない。
さらに、
思考を磨かずにテクニックだけ磨くと、
いつまでも借り物の言葉になり、迫力も説得力もなくなる。
……全面戦争である。
▼つまり
- 単純接触効果 → 小手先
- 小さなイエス → 小手先
- AHAの法則 → 小手先(?)
今までの本が全部“グーパン”されてしまった。
結局どうすればいいのか?
ここまでの流れをまとめるとこうなる。
- 世界最高の話し方はAHAを使えと言う
- 心理テクの本は単純接触と小さなイエスを教える
- 思考派の本はそれらを全部「小手先」と切り捨てる
もはや 話し方界隈は宗派対立 の様相である。
ただし、一つだけ言えるのは——
“伝説の家庭教師”の最強方程式に頼っても、
それが本当に正しいかどうかは分からない。
結局、話し方の本質はテクニックより思考かもしれない。
