子どもに「感謝の心」をどう教えるか|恩を感じる力が人を育てる理由
「恩を感じる力」が欠けた子どもは、やがて道を誤る
デール・カーネギーの著書『道は開ける』には、
「恩義を感じることを子供に教え込む」ことの大切さを示す、
一つの痛ましいエピソードが登場します。
恩知らずな継子たちと、その母親
ある男性がいました。
彼は低賃金の工場労働者でしたが、ある寡婦と結婚します。
妻には二人の子どもがいました。
この男性は、継子たちを大学に通わせるために銀行からお金を借り、
毎日懸命に働きながら四年間かけて借金を返済しました。
にもかかわらず——
彼はまったく感謝されませんでした。
妻も息子たちも、「それは当然のこと」としか思っていなかったのです。
「継父は私たちを大学に行かせて当然。義務だから。」
そう言い放つ母親。
彼女は、「子どもたちに負担を感じさせたくない」と考え、
“恩を感じなくていい”という教育方針を取っていたのです。
「恩を感じさせない教育」がもたらした悲劇
一見、子ども思いのように見えるこの母親の考え。
しかし、それは結果的に「危険な思想」を子どもに植え付けました。
「貧しい者がお金をもらうのは当然の権利だ。」
この感覚は、子どもに“感謝よりも要求”を覚えさせます。
そして、相手の善意や努力を当然視するようになり、
“もらうことが当たり前”という思考を育ててしまうのです。
その結果、息子の一人は会社からお金を横領し、逮捕されてしまいました。
彼にとって「他人の財産を奪うこと」は罪悪ではなく、
「自分の権利を主張する」行為にすぎなかったのです。
感謝の心が「人間の良心」を育てる
人が道を踏み外すとき、
そこには往々にして「感謝の欠如」があります。
感謝とは、
- 他人の善意を理解する力
- 自分が支えられて生きていることを自覚する力
- そして「受け取った恩をどう生かすか」を考える力
この3つを含む、人間の根幹的な徳です。
感謝を忘れた人は、他人の努力を軽視し、
自分の欠乏ばかりに目を向けてしまいます。
逆に、感謝の心を持つ人は、
どんな状況でも前向きに努力できるのです。
子どもに「感謝」を教える3つの方法
では、どうすれば子どもに“恩を感じる力”を育てられるのでしょうか?
ここでは家庭で実践できる3つの方法を紹介します。
① 「ありがとう」を習慣化する
どんなに小さなことでも、「ありがとう」を言葉にすること。
親が率先して感謝を伝える姿を見せることで、
子どもは自然に“感謝する心”を学びます。
② 「誰のおかげで今があるか」を話す
食事や住まい、学校など、
日常の当たり前の背景には多くの人の努力があります。
「このごはんは誰が作ったんだろう?」と問いかけるだけで、
感謝の視点が芽生えます。
③ 「してもらったら、何かを返そう」と教える
感謝は言葉だけでなく“行動”で返すもの。
「お礼の手紙を書く」「手伝いをする」など、
感謝の気持ちを“形”にする経験が、恩を理解させます。
感謝を教えないことは「愛情を欠くこと」
前述の母親は、子どもに罪悪感を持たせないようにと考えました。
しかし実際には、感謝を教えないことこそが、子どもを弱くする行為だったのです。
感謝は、他者との関係を健全に保つ“心の免疫力”。
それを身につけていない人は、社会で必ずつまずきます。
親が子どもに与えるべき最大のギフトは、
「あなたは多くの人に支えられている」という実感です。
それを知る子どもは、謙虚で、優しく、誠実に生きられます。
まとめ:感謝の心は「幸福の根」
- 感謝を教えないと、人は他人の善意を当然と思う
- 感謝を教えると、人は思いやりと誠実さを学ぶ
- 感謝の教育は、子どもの人生を守る“道しるべ”になる
デール・カーネギーが『道は開ける』で伝えたように、
感謝の心は幸福の根です。
それを子どもに教えることは、
知識を与えるよりも、はるかに価値ある教育です。
今日、あなたの周りにいる誰かへ——
小さな「ありがとう」から、感謝の連鎖を始めてみませんか?
