リハビリ関連

胸腰筋膜の肉眼解剖学

胸腰筋膜の基本構造

胸腰筋膜は背部から腰部にかけて広がる線維性膜で、体幹と四肢の力学的連結を担う重要な結合組織です。

胸背部

  • 上方:前鋸筋の前方を通り、頸背部の深頸筋膜の浅層と連続
  • 胸部
    • 脊柱起立筋(伸筋群)を覆う薄い線維性膜
    • 脊柱と上肢を結ぶ筋(広背筋など)と脊柱伸筋群を分ける
    • 付着部位:内側は胸椎棘突起、外側は肋骨角

腰部 ― 3層構造

腰部では胸腰筋膜は特に発達し、後葉・中葉・前葉の3層から成ります。

  1. 後葉(posterior layer)
    • 付着部位:腰椎・仙椎の棘突起、棘上靭帯
    • 下部は腸骨稜、上部は第12肋骨に連続
    • 深部では脊柱起立筋の腱膜と融合
  2. 中葉(middle layer)
    • 付着部位:腰椎横突起先端、横突間靭帯
    • 下部は腸骨稜、上部は第12肋骨下縁・腰肋靭帯
  3. 前葉(anterior layer)
    • 腰方形筋を包む
    • 内側は大腰筋外側部の後方で腰椎横突起前面に付着
    • 上部は外側弓状靭帯を形成

👉 後葉と中葉は脊柱起立筋外側縁で合流し「骨筋膜性コンパートメント」を形成。
👉 前葉と合流することで、腹横筋の起始腱膜をつくり、体幹の前後の連動を可能にする。


生体力学的特徴

  • コラーゲン線維の配列
    • Bogduk によると、後葉は線維配列が複雑な2層構造で、多方向の張力に適応。
  • 腹壁との連続性
    • 腹横筋を引き上げる役割を担い、呼吸・体幹安定に寄与。
  • 荷重伝達
    • 胴体と四肢の間で力を伝達
    • 広背筋・大殿筋・ハムストリングスの張力に影響を受ける

臨床的意義

  • 腰背部痛との関連
    • 胸腰筋膜の伸張・癒着は腰痛の一因となり得る
    • 「脊柱起立筋コンパートメント症候群(erector spinae compartment syndrome)」との関与も指摘
  • 神経支配
    • 感覚神経線維・交感神経節後線維を含む脊髄神経後枝が胸腰筋膜を貫通し、腰背部皮膚へ分布
    • 筋膜由来の痛みを説明する解剖学的根拠となる

まとめ

  • 胸腰筋膜は 体幹の安定性・四肢への荷重伝達・腰痛の病態に深く関与する
  • 腰部は3層構造(後葉・中葉・前葉)で、脊柱起立筋や腰方形筋を包み込み、腹筋群とも連続
  • 神経線維が筋膜を貫通して皮膚に分布することから、筋膜は疼痛の発生源となり得る

👉 胸腰筋膜の理解は、腰痛評価・筋膜リリース・体幹リハビリに直結する重要な基盤となります。

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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。