『税金の本当の役割——財源ではなく、社会を動かす力』
税金はなぜ必要なのか
多くの人が「税金は国の財源」と考える。しかし、これは半分正しく、半分間違いである。
税金の本質的な役割は、単に国の財布を満たすことではなく、社会の秩序と経済の安定を保つ仕組みにある。
税金には、あまり知られていない3つの重要な役割がある。
1.日本円を通用させる「強制力」
まず、税金は通貨の価値を保証する装置として機能している。
日本では、国税通則法によって「納税は日本円で行わなければならない」と定められている。
つまり、私たちは税金を支払うために、日本円を使わざるを得ない。
この「納税の義務」が、日本円という通貨に強制的な通用力を与えているのだ。
言い換えれば、税金があるからこそ、日本円が流通している。税金こそが、通貨の信頼の源なのである。
2.景気を安定させる「自動調整装置」
次に、税金は経済の過熱や停滞を自動的に調整する働きを持つ。
景気が良すぎるときには税収が増え、可処分所得が減ることで熱を冷ます。
逆に景気が悪化すれば税収が減り、人々の手元にお金が残るため、消費や投資が刺激される。
このように、税制そのものが景気を安定させる「ビルトインスタビライザー(埋め込まれた安定化装置)」として機能している。
ただし、消費税にはこの機能がほとんどない。むしろ不況時にも人々の負担を増やす「欠陥税制」といえる。
3.政策目標を達成する「誘導装置」
税金は、社会の方向性をコントロールするためにも使われる。
環境負荷を減らすための排ガス税、喫煙率を下げるためのタバコ税。いずれも「罰金型」の課税である。
一方で、地方移住者への減税や、子どもの数に応じた所得税の軽減など、優遇策として働く場合もある。
つまり、税金とは「人々が望ましい行動をとるよう誘導する仕組み」でもあるのだ。
税金の目的は「経世済民」にある
この3つの役割を踏まえると、税金の目的は明確になる。
それは「国民を豊かに、安全に暮らせるようにする」ための手段である。
政府が本当に行うべきことは、財源を心配することではなく、正しい財政政策を実行すること。
財源は常に国債、つまり政府が発行する通貨によってまかなえる。
日本はまだ、財政拡大と減税によって成長を取り戻すことができる国である。
税金を「取られるもの」と考えるか、「社会を動かす力」と見るか——その認識が、これからの日本を大きく変えていく。
