「子どもに“信頼できる他者”を示すことが親の最初の仕事──アドラー心理学が語る共同体感覚の育て方」
親の最初の大仕事とは?
アドラー心理学は、人間の成長や幸福の土台として「共同体感覚」を重視します。これは「自分は仲間の一員であり、他者に関心を持ち、貢献できる存在だ」という感覚のこと。
そして、その最初の種をまくのは 親 です。
親が子どもに与えるべき最初の経験は、食事や教育以前に、
「自分には信頼できる他者がいる」
という安心感なのです。
信頼できる他者の存在がなぜ大切なのか?
人は生まれた瞬間から一人では生きられません。親の手を通じて、食事・睡眠・安全が守られる中で、子どもは「他者を信頼する」ことを学びます。
もしここで「自分は守られていない」「受け入れられていない」と感じれば、子どもは人間不信に陥りやすくなり、後の人間関係に大きな影響を及ぼします。
つまり、親が最初に与える信頼体験は、子どもが 社会で他者とつながれるかどうかの基盤 になるのです。
親が失敗するとどうなるか?
引用にもあるように、親がこの「最初の大仕事」に失敗すれば、子どもは共同体感覚を持ちにくくなります。
具体的には次のような傾向が見られやすくなります。
- 他人に関心を持ちにくい
- 他人を信頼できないため孤立しやすい
- 自分の利益を優先し、協力を避ける
- 挫折や劣等感に過敏になりやすい
一方で、親から「信頼できる他者がいる」という体験を得た子どもは、自然と「人を信じてもいい」という前提で社会に踏み出していけます。
子どもの「他者への関心」を育てる方法
アドラー心理学は「他者に関心を持つ能力は誰もが本来もっている」と言います。ただし、それを育て、鍛えていく必要があります。では、親としてどんな関わりができるでしょうか?
1. 子どもの話を真剣に聞く
「ふーん」「あとでね」と流さず、目を見て話を聞くこと。それだけで「自分は大事にされている」という感覚が育ちます。
2. 小さな信頼を積み重ねる
約束を守る、秘密を守るといった小さな積み重ねが「この人は信じていい」という基盤になります。
3. 家族や地域との関わりを広げる
祖父母、親戚、友人、地域活動など、家庭の外の「信頼できる人たち」と接する機会を増やすことも効果的です。信頼の輪を広げていく経験が、子どもの社会性を育てます。
4. 親自身が信頼を示す
親が「人を信じている姿」を見せることが、子どもへの最高の教育になります。逆に、親が常に他人を疑っていれば、子どもも「人は信じられないもの」と学んでしまいます。
信頼は「勇気づけ」と直結している
アドラー心理学では「勇気づけ」が教育の中心にあります。勇気とは「困難を克服する力」であり、その土台にあるのが「信頼できる人がいる」という感覚です。
親が「あなたの味方だよ」「どんなときでも信じているよ」と伝えることで、子どもは安心して失敗に挑み、社会に出ていく勇気を育てられます。
まとめ
『人生の意味の心理学 上』が示すメッセージは明快です。
「親の最初の仕事は、子どもに“信頼できる他者がいる”ことを示すこと」
この経験があるかどうかで、子どもの社会性や共同体感覚の育ち方は大きく変わります。
親の愛情や協力を通じて「信じていいんだ」と学んだ子どもは、やがて家族・友人・学校・社会へとその信頼を広げていけます。
今日からできることはシンプルです。
子どもの声に耳を傾け、約束を守り、安心できる存在であることを示す。これこそが、子どもの未来を形づくる最初の一歩なのです。
