政治・経済

『郵政民営化の正体と繰り返される歴史の警告』

taka

郵政民営化という既視感

令和の米騒動のさなか、農林水産行政のトップに就任した人物の動向が注目を集めている。かつてその父が断行した「郵政民営化」の記憶と重なり、次は「農協改革」がターゲットになるのではないかと囁かれているからだ。未来を予測するには、過去を知る必要がある。今こそ、あの熱狂の中で進められた郵政民営化が何であったのか、冷静に振り返る時であるといえる。

インフラ維持の巧妙な仕組み

明治以来、郵便事業は全国津々浦々に通信網を張り巡らせる「国の血管」としての役割を担ってきた。過疎地や離島であっても公平にサービスを提供する。この採算度外視のインフラ事業を支えていたのが、郵便貯金と簡易保険による利益であった。

赤字の郵便事業を、金融部門の黒字で埋める。これは一見、不健全な「どんぶり勘定」に見えるかもしれない。しかし、国民生活に不可欠なインフラを維持するためには極めて合理的なシステムであった。これはJA(農協)が、利益の薄い食料生産・流通を金融部門で支えている構造と同じ理屈である。公共性を守るためには、純粋な市場原理だけでは成立しない領域が存在するのである。

「官から民へ」の裏側

しかし、2000年代初頭、その巨大な金融資産が標的となった。「官から民へ」というスローガンと共に、民業圧迫であるとの批判が強まる。2005年のいわゆる「郵政解散」では、反対派を徹底的に排除する強硬な手法がとられ、国民は熱狂の中で民営化を選択した。

だが、冷静になって考えるべき問いがある。あの時叫ばれた「民」とは、一体誰を指していたのか。国民から「郵便局を民営化してほしい」という切実な声が上がっていたわけではない。そこに、巨大な外圧の存在が見え隠れする。

外圧と構造改革の正体

アメリカ通商代表部が日本に突きつけた「年次改革要望書」。そこには、1990年代から繰り返し、日本の郵政事業、特に簡易保険の民営化と市場開放が求められていた記録が残っている。350兆円とも言われた日本人の虎の子の資産を、国際金融市場へ開放させること。それこそが、グローバル資本が求めた「改革」の本質であった可能性は否定できない。

結果として、民営化後の郵便サービスは縮小し、現場は疲弊した。一方で、提携した外資系保険会社の商品は郵便局の窓口に並ぶようになった。利益を得たのは誰か。不便を被ったのは誰か。その答えは、今の現状が雄弁に物語っている。

思考停止からの脱却

現在、郵便事業は存続の危機に瀕し、再び料金値上げや行政処分のニュースが世間を賑わせている。これは単なる経営の失敗ではなく、インフラを支える構造そのものを破壊した結果であるといえる。

今、同じような論理で日本の農業や他の産業が解体されようとしていないか。マスコミの報道や「改革」という甘い言葉に踊らされず、その背景にある意図を見抜く知性が求められている。歴史は繰り返す。だが、学ぶことで未来を変えることはできるはずだ。我々が選ぶべきは、イメージで語る政治家ではなく、国益と国民の生活を死守する信念を持った代弁者である。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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