政治・経済

「国の借金」の正体を読み解く基礎知識

taka

「借金」という言葉がつくる誤った前提

国の借金とは一体何か。この問いは長く日本社会で誤解され続けてきた。
財務省やメディアによる言い回しでは、政府が“市場にあるお金を借りている”という前提が強調される。
その結果、「国民の預金から借りている」「借りられなくなると破綻する」というイメージが生まれた。
だが、この前提が根本的に間違っている。政府債務は、既存のお金をかき集めたものではなく、新しく生み出されたお金そのものなのである。

政府債務は新しく発行された貨幣

政府が国債を発行するとき、実際には政府・日銀・銀行の取引を通じて、貨幣と債務が同時に生み出される。
これは「信用創造」と呼ばれ、現代の貨幣がどのように生まれるかを説明する基本的な仕組みである。
銀行から借りる形式を取るものの、実質的には“何もないところから新しい貨幣をつくり出している”状態に近い。
つまり政府債務は、誰かの預金を取り崩したものではなく、むしろ国債発行によって国民の預金が増える構造になっていると言える。

国民の資産として増えていく預金

コロナ禍で実施された一律10万円給付は、この構造を理解する良い例だ。
給付金12兆円は国債発行によって生まれ、そのまま国民の預金として計上された。
政府は“借金をして国民の預金を使った”のではなく、“新しくお金をつくって国民へ渡した”というのが実像である。
同じことは民間の借り入れでも起こっており、銀行から融資が行われるたびに貨幣は新たに生み出される。
ただし、民間の債務は本当の借金であり返済義務が伴うのに対し、政府債務は性質がまったく異なる。

政府の債務と民間の借金はまったく別物

民間は返済できなければ破綻するが、政府は自国通貨を発行できるため、返済不能という概念は成り立たない。
政府の債務は、民間にとっての負債ではなく、むしろ国民にとっての資産として積み上がっていく。
これこそが「国の借金」の正体であり、国民が返すべき負担ではない。
政府債務が増えることは、将来世代へのツケではなく、国民への供給であり、実体経済への投資そのものと言える。

誤解を解き、正しい構造を理解する

長年にわたり、国の借金は危険だという印象が繰り返し刷り込まれてきた。
だが実際には、政府債務は国家の運営において必要不可欠な貨幣創出のプロセスであり、国民の資産を生み出す仕組みである。
誤った前提のまま議論を続ければ、必要な投資が妨げられ、未来への成長力まで失われてしまう。
本質を正しく理解することが、健全な財政観への第一歩になるといえる。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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