財務省の最強武器「骨太の方針」の正体
国民が知らない予算編成の裏側
多くの日本人は、国の予算が国会審議の場で決まると思っているが、それは大きな誤解である。実は、勝負は前年の夏に既に決しているのだ。その中心にあるのが、毎年6月頃に閣議決定される「骨太の方針」である。正式名称は長く誰も読まないが、これこそが財務官僚にとっての「聖書」であり、政治家さえも縛り付ける絶対的なルールブックとなっている。なぜこれほどまでに重要なのか。それは、この方針が予算の「上限」をあらかじめ決めてしまうからだ。
巧妙に仕組まれた「緊縮の罠」
プロセスを整理しよう。まず6月に骨太の方針が決まり、それに基づいて各省庁への「概算要求基準」が作られる。各省庁は8月末までに財務省へ予算を要求し、冬にかけて財務省がそれを査定する。一見、論理的な流れに見える。しかし、ここに罠がある。最初の骨太の方針に「プライマリーバランス(PB)黒字化目標」という文言が入っている限り、どんなに有益な政策であっても、財政規律を理由に予算が削ぎ落とされてしまうのだ。たとえ政権が変わり、総理大臣が変わったとしても、一度閣議決定されたこの方針は「既定路線」として引き継がれる。財務省は「決定事項ですから」と、政治家の口を封じるのである。
財務官僚の恐るべき文書作成術
かつて安倍政権下において、驚くべき事態が起きたことがある。骨太の方針の目立たない脚注や離れたページに、「社会保障以外の支出は3年間で1000億円しか増やさない」という文言が巧妙に忍ばせられていたのだ。当時の総理さえ気づかずに決裁してしまったこの一文が、後の予算編成で強力な武器となった。「閣議決定されています」と言われれば、誰も反論できない。財務官僚は自ら書いたシナリオを、あたかも神の啓示であるかのように使いこなし、徹底的な歳出カットを実行する。これが彼らの常套手段なのだ。
5月の攻防が日本の未来を決める
今年の最大の焦点は、5月から始まる「骨太の方針2026」の議論にある。ここでPB黒字化目標を撤廃、あるいは無力化できるかが、日本経済再生の分水嶺となるだろう。かつては財務省の息のかかった有識者ばかりだった会議も、近年はまともな議論ができるメンバーが入り始めている。財務省の「査定権」という強大な権力に対し、政治が主導権を取り戻せるか。ニュースではあまり報じられないが、6月の閣議決定までの1ヶ月間こそが、我々の生活を左右する最も重要な闘いの期間なのである。目を凝らして監視すべきだ。
