『疲れない脳をつくる生活習慣』に学ぶ|集中力・思考力を高める4つの“脳メンテナンス習慣”
『疲れない脳をつくる生活習慣』──脳の「基礎体力」を整える4つの習慣
仕事の終わりにぐったりしてしまう。
集中力が続かない。
そんな「脳の疲れ」に悩む人は多いでしょう。
予防医学研究者・石川善樹氏の著書『疲れない脳をつくる生活習慣』(三笠書房)は、そんな現代人の“脳のコンディション”を整える実践書です。
石川氏は、ハーバード大学で公衆衛生を学び、企業や大学とともに「Well-being(よりよく生きる)」をテーマに研究を続けています。本書で紹介されるのは、科学的根拠に基づいた「脳の疲れを取る4つの生活習慣」──瞑想・睡眠・姿勢・食事。
この4つを整えることが、脳の基礎体力を高め、パフォーマンスを劇的に変えてくれるのです。
1. 「瞑想」で脳のアイドリング機能を回復する
疲れない脳をつくる第一歩は、背筋を伸ばして深く呼吸すること。
呼吸は、心と体の“バロメーター”です。
ストレスが溜まっている人の呼吸は浅く、無意識に肩が上がり、交感神経が過剰に働いています。
深い呼吸は、副交感神経を優位にし、脳をリラックスモードに切り替えます。
そして、この呼吸をベースにしたメソッドが「瞑想」です。
瞑想には、2つの種類があります。
- 集中瞑想:呼吸や音など、1点に意識を向ける。
- 観察瞑想:思考や感覚をただ“観察”する。
たとえば昼休みに3分だけ目を閉じ、
「右肩が重い」「外で車の音がした」と感じるまま観察する。
この“脳内実況”が、雑念を整理し、脳の“アイドリング状態”を取り戻します。
最新の脳科学では、瞑想が**前頭前皮質(集中力)や海馬(記憶力)**を活性化し、感情の暴走を抑えることも明らかになっています。
Googleが採用する研修「Search Inside Yourself(SIY)」のベースも、このマインドフルネス瞑想。
世界中のリーダーたちが“脳を整える技術”として実践している理由がここにあります。
2. 「7時間睡眠」が脳を老化から守る
あなたの睡眠時間は何時間でしょうか?
もし「6時間くらい」と答えるなら要注意です。
最新の研究では、6時間睡眠は7時間睡眠に比べて脳の老化が2倍速く進むことが分かっています。
さらに、睡眠不足状態では、脳は**軽い酩酊状態(ほろ酔い)**に近く、判断力や記憶力が著しく低下します。
理想的な睡眠時間は個人差がありますが、日中に眠気がないことが目安。
また、量だけでなく「質」も重要です。
質の高い睡眠をとるためのポイントは3つ。
- 寝る2時間前に入浴(38〜40℃)
- 夕方の軽い運動で体温リズムを整える
- 寝る直前のスマホ・PC使用を避ける
体温が一度上がってから下がるとき、人は自然と眠くなります。
この“体温リズム”を整えるだけで、驚くほど眠りの質が変わります。
3. 「姿勢」が変わると、脳の集中力も変わる
仕事中、気づけば猫背になっていませんか?
姿勢の悪さは、肩や腰の負担だけでなく、脳の集中力にも悪影響を及ぼします。
正しいデスクワーク姿勢のポイントは次の2つ。
- モニターの上3分の1が目線の高さにくるよう調整する
- キーボードを膝の上に置く
机の上で肩を上げたままタイピングすると、首や肩の筋肉が緊張し続け、呼吸が浅くなります。
膝の上で作業すると、自然と背筋が伸び、呼吸も深くなります。
また、姿勢を整える簡単トレーニングとして紹介されているのがドローイン・エクササイズ。
お腹を引っ込めて10〜30秒キープするだけで、骨盤が整い、自然に正しい姿勢が保てます。
椅子に座ったままでもできるので、会議中や通勤電車の中でもおすすめです。
4. 「血糖値の安定」が脳の集中を保つカギ
脳のエネルギー源はブドウ糖。
血糖値の乱高下は、脳のパフォーマンスを直接左右します。
集中力が切れる、イライラする、眠くなる──これらはすべて血糖値の乱れが原因です。
対策は2つ。
- 3〜4時間おきに軽く食べる(欠食しない)
- 低GI食を意識する
GI値とは「血糖値がどれだけ上がるか」を示す数値。
白米より玄米、うどんよりそば、パンよりパスタが低GI食品です。
食べる順番もポイントで、
**「サラダ → タンパク質 → 炭水化物」**の順に食べると、糖の吸収がゆるやかになります。
朝は「太陽・タンパク質・炭水化物」の“3つのた”を意識して、
1日の脳のリズムを整えましょう。
5. 「疲れない脳」は誰でもつくれる
本書の面白い点は、「脳は大人になっても鍛えられる」と明言していることです。
たとえばロンドンのタクシー運転手は、2万本以上の道路を記憶する必要があります。
研究者が彼らの脳を調べたところ、記憶を司る「海馬」が平均より厚かったそうです。
つまり、脳は使い方次第で成長する臓器なのです。
瞑想で前頭前皮質を鍛え、睡眠で修復し、姿勢で集中力を支え、食事でエネルギーを安定させる。
これらの生活習慣は、どれも今日から始められる“脳の筋トレ”です。
まとめ|「疲れない脳」は習慣でつくる、努力ではない
『疲れない脳をつくる生活習慣』は、根性論ではなく「科学的セルフケア」の本。
著者の言葉を借りれば、
「脳のコンディションを整えることは、人生の質を整えること」
ということ。
瞑想、睡眠、姿勢、食事。
この4つの習慣を整えるだけで、脳の疲れは減り、思考も感情もクリアになります。
“疲れない脳”は、才能ではなく生活のデザインから生まれる。
まずは今日、背筋を伸ばして深く息を吐くことから始めてみましょう。
