マイナスをプラスに変える力──アドラー心理学が教える“逆境を活かす生き方”
アドラーが見出した“人間の驚くべき力”
オーストリアの精神医学者 アルフレッド・アドラー は、フロイトやユングと並ぶ心理学の巨匠として知られています。
彼が生涯をかけて研究したテーマのひとつが、**「人間の内に秘められた可能性」**でした。
長年の臨床と研究の末、アドラーはある確信にたどり着きます。
「人間の驚くべき特徴のひとつは、マイナスをプラスに変える力を持っていることだ。」
この言葉は、デール・カーネギーが『道は開ける』の中で紹介した名言でもあります。
つまり、人はどんな環境にあっても、その経験を糧に変える力を本来持っているというのです。
「劣等感」は悪ではない──アドラー心理学の真意
アドラーの心理学を象徴する概念が、「劣等感(Inferiority feeling)」です。
多くの人は「劣等感=悪いもの」と捉えがちですが、アドラーの考え方は違います。
劣等感とは、成長への原動力である。
つまり、自分に足りない部分を意識するからこそ、人は努力し、学び、成長できる。
「マイナス」があるからこそ、「プラス」を生み出すエネルギーが生まれるのです。
たとえば──
- 学業に自信がなかった人が、努力を重ねて研究者になる
- 人見知りだった人が、相手の気持ちに寄り添うカウンセラーになる
- 過去に貧しかった人が、努力で事業を成功させる
これらはすべて、「マイナスがプラスに転化した」具体例です。
アドラーは、「人間は自分の経験をどう意味づけるかで未来を変えられる」と強調しています。
“マイナス”を活かす3つのステップ
では、どうすれば私たちも日常のマイナスをプラスに変えることができるのでしょうか?
アドラー心理学の考え方とカーネギーの実践哲学を合わせ、3つのステップにまとめました。
① 事実を受け入れる
現実を否定せず、「今の自分はこうなんだ」と素直に受け止めること。
否定ではなく受容から始めることで、心が前向きに動き出します。
② 「この経験から何を学べるか?」を問う
過去の失敗や挫折を、「意味のない不運」として終わらせないこと。
どんな出来事にも学びの種があります。
「この経験が私に何を教えてくれているのか?」と問い直してみましょう。
③ 行動を通じて“意味”を創り出す
アドラーは「行動が人を変える」と繰り返し述べています。
思考を変えるよりも、まず小さな行動を起こすこと。
その積み重ねが、マイナスをプラスに変える現実的な力になります。
「意味づけ」を変えれば、人生は変わる
アドラー心理学の根底には、**「原因論」よりも「目的論」**という考え方があります。
過去にどんな出来事があったかではなく、それをどう使うかが大切なのです。
たとえば、
「失敗したから自信がない」ではなく、
「失敗を活かして、次はもっと良くなる」と考える。
つまり、過去の出来事に“新しい意味”を与えることが、人生を動かす鍵になります。
デール・カーネギーとアドラーが共鳴する“前向きな哲学”
デール・カーネギーもまた、著書『道は開ける』の中でこう述べています。
「困難は避けるものではない。それを乗り越える中でこそ、人は幸福を見いだす。」
この考え方は、アドラーの「マイナスをプラスに変える力」とまったく同じ方向を指しています。
どちらも、人間には本来、自分の人生を創り直す力が備わっていると信じていたのです。
まとめ──人は誰でも、自分の物語を変えられる
私たちは時に、過去の失敗や欠点を重く感じます。
けれど、アドラーの言葉を思い出してください。
「人間の驚くべき特徴のひとつは、マイナスをプラスに変える力を持っていることだ。」
あなたが「ダメだ」と感じていることは、
見方を変えれば「新しい力を生み出す種」かもしれません。
人生のマイナスは、あなたを止めるものではなく、
あなたを前に押し出す“エネルギー”なのです。
