富や地位では人は自由になれない
エピクテトスは『語録』の中でこう述べています。
「人を束縛から解放し、自立させるものは何か? 富も、高い官職も、国家も王国も、その役には立たない……生き方の知識が必要である。」
つまり、私たちを本当に自由にするのは外的なものではなく、「どう生きるか」という知恵です。
地位や財産を得ても、それが人生の満足を保証してくれるわけではありません。真の自立とは、人生の原則を理解し、それを実践することから生まれるのです。
人生の二つの務め
ストア哲学の視点から見ると、人生で果たすべき務めは驚くほどシンプルです。
- 善い人間になること
正義・自制・勇気・思いやりといった徳を実践し、周囲と誠実に関わること。 - 大好きなことに取り組むこと
情熱を注げる活動に力を尽くし、自分にしかできない貢献を果たすこと。
これ以外のこと――名声や比較、他人の評価に振り回されること――は時間と才能の浪費にすぎません。
どうすれば実践できるか?
口で言うのは簡単ですが、実際に行動に移すのは難しいものです。そこでストア哲学の原則を応用します。
- 道から外れない:日々の選択を原則に照らして判断する
- 有害な衝動を避ける:怒りや嫉妬に振り回されない
- 外部の圧力に屈しない:他人の期待や世間体ではなく、自分の理性に従う
そして、自問しましょう。
- 「自分にしかできないことは何か?」
- 「この限りある時間を、最も有効に使う方法は何か?」
小さな選択の積み重ねが人生をつくる
善い人間であることも、大好きなことに打ち込むことも、特別な舞台でしか試されないわけではありません。
- 友人に誠実に接する
- 家族に感謝を伝える
- 苛立ちを抑えて冷静に行動する
- 毎日少しずつでも好きなことに時間を割く
こうした 日常の小さな選択や行動 こそが、「どう生きるべきか」という技を育てていくのです。
まとめ ― 人生の務めはシンプルである
エピクテトスの教えは、私たちにこう伝えています。
- 富や地位ではなく、生き方の知識が人を自由にする
- 人生の務めは二つ――善い人間であることと、大好きなことに取り組むこと
- 日々の小さな選択の積み重ねが、その実践を支えてくれる
今日一日、自分の行動がこの二つの務めにかなっているかを意識してみましょう。それが「生きる知恵」を実践する第一歩となります。