論破なんて意味がない。「あの人がわかってくれない」本当の理由を教えます
「どう考えても、私の言っていることの方が正しいのに!」 「なんであの人は、あんな理不尽なことを言うんだろう?」
家族や同僚と意見が対立したとき、そんなふうに相手を責め、自分の正当性を証明しようと必死になった経験はありませんか?
実は、人間関係のトラブルにおいて「どちらが正しいか(白黒つけること)」にこだわるのは、解決を遠ざける一番の原因です。
この記事では、**「論理的にはありえないが、心理的には二人とも正しい」**という、一見矛盾した真実について解説します。
私は普段、リハビリの現場や経済活動の視点から人の行動を見ていますが、この「心理的な正しさ」を理解することは、あらゆる対立を解消する特効薬になります。
結論をお伝えします。相手を論破しようとするのをやめ、「もう一つの正解」を探し始めたとき、あなたのストレスは驚くほど軽くなります。そのメカニズムを紐解いていきましょう。
「6」と「9」の落書き
まず、わかりやすい例え話をしましょう。 地面に数字の「6」が書かれています。
- Aさん(下から見ている): 「これは『6』だ! 絶対に間違いない!」
- Bさん(上から見ている): 「何言ってるんだ、これは『9』だ! 眼科に行け!」
さて、論理的に考えれば、描かれた図形は一つだけです。 しかし、心理的(主観的)には、二人とも100%正しいことを言っています。
これが、元の文章にある**「論理的にはありえないが、心理的にはありえる」**という現象の正体です。
立っている場所(立場)が違うだけ
現実社会のトラブルのほとんどは、この「6と9」の言い争いです。
- 妻(家庭を守る立場): 「将来のために貯金すべきよ(正論)」
- 夫(今の激務を癒やす立場): 「たまにはパーッと旅行に行こうぜ(正論)」
お互いに見ている景色(立場、経験、価値観)が違うため、全く逆の意見であっても、本人にとってはそれが「揺るぎない真実」なのです。
ここで「論理」を持ち出し、「貯金の重要性についてのエビデンス」を並べ立てて夫を論破しても、夫婦仲が悪くなるだけで、本当の解決(納得)には至りません。
「事実は一つ」という思い込みを捨てる
私たちは学校教育で、「答えは一つ(1+1=2)」と教わってきました。 そのため、意見が食い違うと、無意識に**「私が正しい = ということは、あなたは間違っている」**という図式を作ってしまいます。
しかし、人の心や人間関係において、事実は一つではありません。
経済と医療の視点で見ると
- 経済: 商品の価格交渉において、「高く売りたい売り手」と「安く買いたい買い手」。利益相反に見えますが、合意すれば「適正価格」として両者が正解になります。
- 医療: レントゲンに異常がなくても、患者さんが「痛い」と言えば、その痛みは患者さんにとっての「真実」です。医者が「画像に映ってないから痛くないはずだ」と論理で否定しても、患者さんは治りません。
「事実は、人の数だけ存在する」 この前提に立つことが、大人なコミュニケーションの第一歩です。
「勝ち負け」から「共有」へ
では、意見が対立したときはどうすればいいのでしょうか? 相手に媚びて、自分の意見を曲げる必要はありません。
重要なのは、**「私も正しい。そして、あなたも(あなたの視点では)正しいのかもしれない」**という姿勢を持つことです。
魔法の言葉「あなたにはどう見えている?」
相手を否定する代わりに、相手の立っている場所(視点)に興味を持ってみましょう。
- × 「その考えは間違っているよ。なぜなら…」
- 〇 「なるほど、私とは違う意見だね。あなたの位置からは、この問題がどう見えているのか教えてくれない?」
こう尋ねるだけで、相手は「攻撃された」ではなく「尊重された」と感じます。 お互いが「6」に見える理由と、「9」に見える理由を出し合ったとき、初めて「じゃあ、間の『8』を目指そうか」とか、「今回は君の『6』の視点を採用しよう」といった、建設的な「第3の案」が生まれるのです。
まとめ・アクションプラン
今回の記事では、意見の対立を解消する「心理的な正しさ」について解説しました。要点は以下の3つです。
- 論理的な正解は一つでも、心理的な正解は人の数だけ存在する。
- 対立は「間違い」ではなく、立っている場所や視点の違いから生まれる。
- 論破するのではなく、「相手の視点(正しさ)」を理解しようとする姿勢が信頼を生む。
最後に、今日からできるアクションプランを提案します。
【Next Action】 次に誰かと意見が食い違ってイラッとしたとき、心の中でこうつぶやいてください。 「私は『6』に見えているけれど、あの人には『9』に見えているのかもしれない」
そして、一言だけ言葉を変えてみましょう。 「でもね」と反論するのをやめて、**「なるほど、そういう見方もあるね」**と一旦受け止める。 このワンクッションが、不毛な争いを「豊かな対話」に変えるスイッチになります。
