📚 自分の媒体をフル活用せよ──フランクリンに学ぶ“発信力”の本質
■ 「プア・リチャードの暦」──25年続いたロングセラー
1732年、ベンジャミン・フランクリンは「リチャード・サンダース」という筆名で、一冊の小さな暦本を出版しました。
それが、のちに有名となる 『プア・リチャードの暦(Poor Richard’s Almanack)』 です。
「わたしは、この本を面白くて役に立つものにしようと努力した。
25年間も出版を続け、年に1万部売れるようになった。」
当時の1万部は驚異的な数字であり、フランクリンは一気に成功者の仲間入りを果たしました。
しかし彼の目的は単なる商業的成功ではなく、**「多くの人に教訓を届けるための仕組み」**をつくることにありました。
■ なぜ「暦」を選んだのか?
フランクリンはこう述べています。
「フィラデルフィア近郊の町や村では、この暦がない家はないほど普及していた。
普通の人々に教訓を伝える媒体として、暦が最も適切だと考えた。」
つまり彼は、“人々が日常的に手に取るもの”を選んだのです。
当時、一般庶民が本を買うことはほとんどありませんでした。
だからこそ、生活の一部である「暦」に知恵や格言を忍ばせることで、教育と啓蒙を同時に実現したのです。
これは、まさに現代のマーケティングで言う“プラットフォーム戦略”の原点。
人々が自然に触れる場所に、自分のメッセージを届ける——それがフランクリン流のメディア活用でした。
■ 「役立つ+面白い」が、最強のコンテンツ
『プア・リチャードの暦』が成功した理由は、単に暦として便利だったからではありません。
フランクリンは、その余白に「ことわざ風の短い文章」を加えました。
「注目すべき日と日のあいだに、勤勉と倹約に関する短い文章を挿入した。」
つまり、“学びながら楽しめる”内容にしたのです。
この発想は、現代で言えば「フォロワーが共感する投稿」や「学びのあるコラム」に近いもの。
彼は時代を超えて、“コンテンツの価値は実用性とエンタメ性のバランスにある”ことを証明しました。
■ 自分のメディアを「教育の場」に変える
フランクリンは『プア・リチャードの暦』を、ただのビジネスツールではなく、**“人々をより良く導くための教育メディア”**として使いました。
勤勉・倹約・誠実といった価値観を、毎年の暦の中で繰り返し発信することで、
庶民に「生きる知恵」を自然と浸透させていったのです。
たとえば、彼の有名な格言——
「早起きは三文の徳」
「一日延ばしは時間泥棒」
「倹約はすべての富の源」
これらはすべて『プア・リチャードの暦』から生まれたものです。
フランクリンは、**発信を通じて社会を変えた最初の“インフルエンサー”**と言えるでしょう。
■ 現代にも通じる「媒体をフル活用する力」
18世紀の印刷機と、21世紀のSNS。
技術は変わっても、「自分の媒体を活用して価値を伝える」という本質は変わりません。
- フランクリンにとっての「暦」=現代の「ブログ」や「SNS」
- 知恵や教訓を伝えること=ブランディングと信頼構築
- 広く届くメッセージ=継続的な発信
つまり、フランクリンがやったことは、今の時代で言えば「コンテンツマーケティング」そのものです。
彼は「文章」と「媒体」を融合させ、人々の行動や価値観を変える力を持っていたのです。
■ まとめ:「発信力」は、時代を超える武器
フランクリンの『プア・リチャードの暦』は、単なる暦本ではなく、25年続いた自己ブランディングのメディアでした。
彼の成功の本質はこうです。
- 自分が得意な分野で発信する
- 役立つ情報を、身近な媒体で届ける
- 継続的に価値を提供する
フランクリンの時代には印刷。
私たちの時代にはインターネット。
手段は違っても、「自分の媒体をフル活用する」ことの重要性はまったく変わっていません。
フランクリンの言葉を現代風に言い換えるなら、
「発信しない人に、チャンスは来ない。」
あなたの知識・経験・思いを、どんな形でもいい。
今日から「あなた自身のメディア」で伝えてみましょう。
それが未来の信用と富を生む第一歩です。
