「財産を突然失うこともある」―お金に頼らない生き方がもたらす本当の安心

財産を突然失うこともある ― 富に頼る人生のはかなさ

「築き上げた富を突如失うことがある。」
この言葉は、旧約聖書『コヘレトの言葉（伝道の書）』5章13〜16節に記されています。

コヘレトは、富を得るために人生を捧げた人が、ある日すべてを失うという現実の痛ましさを語ります。
どれほど努力して築き上げた財産も、自然災害や事故、社会の変化によって一瞬で崩れ去ることがあります。
そしてそのとき、富は人を守ってはくれない――それが、この箴言の核心です。

現代社会でも、この言葉は決して過去のものではありません。
経済の浮き沈み、天災、予期せぬ病気――いつ何が起こるかわからない時代に生きる私たちは、改めてこの教えに耳を傾けるべき時を迎えています。

1. 富は「頼りになるようで、ならない」もの

コヘレトはこう嘆きます。

「富を得るために力を尽くした人の財産が、その本人を守ることはできない。」

富は確かに便利で、私たちの生活を豊かにする力を持っています。
しかし、それが命や幸福を保証するものではないことを、誰もが心の奥で知っているはずです。

家を建て、貯金を重ね、投資を成功させても、それが災害で一夜にして失われることもある。
また、健康や人間関係を犠牲にしてまで得た富は、心を満たしてはくれません。

富に依存しすぎることは、風をつかもうとするようなもの――掴んだつもりでも、手の中には何も残らないのです。

2. 「お金で守れないもの」を知ることが、真の知恵

富を追うこと自体は悪ではありません。
問題なのは、富に「自分の安心や価値」を預けてしまうことです。

コヘレトは、人が死を迎えるとき、

「この世に生まれ出たときと同じように、何一つ携えていくことはできない。」
と述べています。

つまり、財産はこの世限りのもの。
どれほどの富を得ても、それを持って次の世界へ行くことはできない。

だからこそ、生きている今、
「お金で買えないもの」――信頼、感謝、愛情、時間――
これらを大切にすることこそ、真の豊かさへの道なのです。

3. 富を失うとき、人は「本当に必要なもの」を知る

人生の中で、財産や地位を失う経験をした人は、しばしばこう言います。
「失って初めて、大切なものが見えた」と。

それは、お金そのものではなく、それを通して守りたかったもの――
家族、健康、友情、平穏な日常。

富を失ったときに残るものこそが、あなたの“本当の財産”なのです。
そして、その気づきこそが、コヘレトが「知恵」と呼ぶものにほかなりません。

4. 富に心を奪われない３つの生き方

では、私たちはどのようにして「富に縛られない生き方」を実現できるのでしょうか。
コヘレトの教えを現代風に置き換えると、次の３つの実践が挙げられます。

1. 「足るを知る」感覚を持つ
   　もっと多く、より上へ――と追い続けるより、今あるものに感謝する心を育てる。
   　欲のコントロールこそ、最も価値ある自制心。
2. お金の使い方に「意図」を持つ
   　見栄や不安のためではなく、自分と周囲の幸せのために使う。
   　お金を“流す”ことで、豊かさが循環する。
3. 経験や人との関係に投資する
   　形ある財産は失われても、経験と信頼は失われない。
   　人との絆は、どんな富よりも人生を支えてくれる。

5. 富は「使うため」にあり、「執着するため」にあらず

富を持つこと自体は悪ではなく、それをどう扱うかが問われています。
コヘレトの言葉は、「富を拒む」教えではなく、
「富に心を奪われるな」という警鐘です。

お金を目的ではなく手段として扱うとき、
そこに初めて「心の自由」が生まれます。

富に支配されるのではなく、
富を活かして人を助け、喜びを分かち合う。
それが“知恵ある生き方”であり、真の豊かさなのです。

まとめ：お金よりも残るものを、大切に

• 富は頼りになるようで、いつ失われるか分からない
• 失って初めて、「本当に必要なもの」が見える
• 富に執着せず、感謝と誠実をもって生きる
• お金は目的ではなく、幸せを広げる手段

コヘレトの言葉は、こう問いかけます。
「あなたの人生の中心にあるのは、富か、それとも愛か？」

富は失われても、心の豊かさは誰にも奪えません。
風のように移ろうものを追うのではなく、
今ここにある幸せを丁寧に育てていく――
それこそが、人生を本当に豊かにする道なのです。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。