「どこにいるのか」を知らない人生
マルクス・アウレリウスは『自省録』の中で次のように書いています。
「宇宙が何かを知らぬ者は、自分がどこにいるかを知らない。己の人生の目的を知らぬ者は、自分が何者であるかも知らない。」
これは単なる哲学的な言葉遊びではありません。私たちの多くが、環境や社会に流されて生きている現実を突きつける言葉です。
- 自分は今どんな状況にいるのか?
- 何を目指しているのか?
- それは本当に自分が望むことなのか?
こうした問いに答えられないと、人生の選択は周囲の声や一時的な流行に左右されてしまいます。
「あなたは何者ですか?」への戸惑い
アメリカのコメディアン、ミッチ・ヘドバーグはラジオ番組で「あなたは何者ですか?」と問われ、思わず戸惑ったというエピソードを残しています。
表面的には簡単な質問のように思えます。名前や職業を答えれば済む話です。しかし、私たちの多くはこの問いを深く掘り下げられると答えに窮します。
- 自分は何を大事にしているのか?
- 自分の人生の目的は何か?
- どうしてこの場所、この人生を選んだのか?
これらに明確な答えを持たないまま走り続けると、方向感覚を失い、虚しさや疲労感に押しつぶされやすくなります。
どこ・誰・何・なぜ──4つの問い
マルクス・アウレリウスの言葉を、現代的に置き換えると次のようになります。
- どこにいるのか(Where)
自分の現状を客観的に把握する。環境、人間関係、キャリアの位置づけなど。 - 誰なのか(Who)
自分の価値観やアイデンティティを定義する。肩書きではなく、何を大事にする人間なのか。 - 何をするのか(What)
自分のエネルギーをどこに投じるのか。目標や行動指針を定める。 - なぜここにいるのか(Why)
人生の意味づけを明確にする。使命感や生きる動機を見つける。
この4つの問いは、自己啓発書やコーチングでも繰り返し語られてきたテーマです。しかし2000年前の哲学者がすでに同じ問いを投げかけていたことは驚きです。
表面的な答えに惑わされない
多くの人は、社会的に「分かりやすい答え」を持っています。
- 会社員だから「私は会社の一員」
- 親だから「私は子どもの世話をする人」
- 趣味を聞かれたら「スポーツをする人」
これらは確かに一部の答えですが、すべてではありません。マルクス・アウレリウスが言うのは、もっと深いレベルでの答えを探せということです。
もし自分の人生の目的が分からなければ、他人の称賛や非難に一喜一憂し続けることになります。周囲に認められるためだけに生きるのではなく、自分の「なぜ」を持つことが自由につながるのです。
どうやって答えを探すか
人生の根本的な問いに答えるのは簡単ではありません。しかし、次のような方法で少しずつ輪郭を描くことができます。
- 書き出す
「自分にとって大事なこと」を毎日数分ノートに書く。 - 問いかける
何かを選ぶときに「これは自分の目的に合っているか?」と考える。 - 他人と比べない
他人の評価や社会の常識に縛られず、自分の軸を持つ。 - 立ち止まる時間を持つ
忙しさに流されず、哲学や読書、内省の時間を確保する。
まとめ
マルクス・アウレリウスは、『自省録』の中で「どこ・誰・何・なぜ」を問うことの重要性を説きました。
- どこにいるのかを知る → 現状認識
- 誰であるかを知る → アイデンティティの確立
- 何をするかを知る → 行動指針の明確化
- なぜここにいるかを知る → 人生の意味づけ
これらの問いに向き合うことは簡単ではありませんが、一歩ずつ答えを見つけていくことが、人生をより豊かで意味あるものにする道です。