お金の理解が変える未来──消費税減税という現実的な処方箋
正しく知ることで見えてくる選択肢
ここまで国債発行と財政支出の必要性を説明してきたが、それでも「国債は悪いものだ」という印象が消えない人もいるだろう。そんな方に、もう一つの角度から考えてほしい。デフレとは「供給が需要を上回っている状態」であり、これを解消するには世の中で使えるお金を増やせば良い。国債発行に抵抗があるのなら、減税という方法がある。実は減税もまた、国債発行と同じように市中の資金量を増やす効果を持っている。
消費税は“消費への罰金”である
消費税とは、文字どおり「消費することに対する課税」である。つまり、使えば使うほどお金を失う仕組みだ。デフレは需要不足が原因で起こるにもかかわらず、消費に罰金を課し続ければ需要はさらに縮み、デフレは深刻化する。この矛盾を抱えたまま景気が良くなるという考えは成り立たない。国債発行に抵抗があるのなら、せめて消費税を下げ、需要を喚起する道を選ぶべきだ。
減税は国債発行と同じ構造を持つ
減税とは、政府が本来徴収するはずだった税収を民間に残す行為である。これは、民間の可処分所得を増やし、需要を底上げするという点で、国債発行と本質的に同じ働きを持つ。プライマリーバランスや国債残高といった数字に恐れを抱く必要はなく、むしろ需要が足りない状態では減税こそが正しい判断といえる。デフレが長期化した日本に必要なのは、財政規律ではなく、国民が消費できる環境を整えることである。
倹約は国を救わない
「国のために節約しよう」「自分が我慢すれば日本が助かる」という考え方が広まっている。しかしこれはデフレ期において、最も危険な誤解である。国全体が消費を減らせば需要がさらに縮小し、企業の売上は減少し、賃金は下がり、貧困が加速する。国民の倹約が国を救うというのは、家計の論理を国家に当てはめた誤った思考だ。デフレ下で必要なのは、消費を増やす政策であり、国民が遠慮することではない。
「国民一人当たり800万円の借金」という誤解
ニュースなどで聞かれる「国民一人当たり800万円の借金」という表現は、まったく意味がない。国債とは政府と日銀の間で行われる通貨発行の手続きであり、国民は債務者ではない。国民一人当たりで割るという計算そのものが不適切である。国民が節約し、消費を抑えたところで国の財政が改善されるわけではない。むしろ需要が減ることで経済はますます痩せ細ってしまう。
