「これは誰の言葉か?」「どの派閥の考えか?」――学びの場でよく耳にする問いです。しかし、古代ローマの哲学者セネカは『心の平静について』でこう述べました。
「悪い書き手のよい言葉を引用することは、けっして恥ではない」
セネカはストア派の哲学者でしたが、しばしば対立するエピクロス派の言葉を引用しました。派閥の違いよりも、「その知恵が役に立つかどうか」を重視していたのです。
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出典よりも価値が大切
ストア派とエピクロス派は正反対の哲学だと考えられてきました。しかしセネカにとって、それは本質的な問題ではありませんでした。重要なのは、その言葉や考えが「人間をより良くする」ものであるかどうかです。
この柔軟さは、現代社会でも極めて重要です。SNSやメディアでは「この人は信用できる/できない」とレッテルを貼りがちですが、大切なのは発言の出典ではなく中身です。
原理主義を超える視点
セネカの姿勢は、現代の原理主義的な態度に一石を投じます。宗教や政治、学問の世界では「この派閥の考えだから受け入れない」という態度が少なくありません。しかし、そうした姿勢はせっかくの知恵を無駄にします。
- 誰が言ったかよりも、何を言ったか。
- 完全に一致するかよりも、部分的にでも役立つか。
この視点を持つだけで、世界は一気に学びの宝庫に変わります。
今日からできる実践
- 異なる立場の本を読む → 自分の考えと違っても、役立つ部分を探す。
- 相手の肩書きを忘れる → 上司でも部下でも、よいアイデアは取り入れる。
- SNSの情報も吟味する → 誰が発信したかより、内容が有益かどうかに注目する。
まとめ
セネカの教えはシンプルです。「役立つ知恵はどこからでも取れ」。出典や名声にとらわれず、本当に価値あるものを柔軟に取り入れることが、学びを深め、人生を豊かにする最良の方法なのです。