『YOUR TIME(ユア・タイム)』レビュー|4063の科学データが導く“自分専用の時間術”
「時間術が効かない」のは、あなたのせいではない
ToDoリスト、ポモドーロ、イフゼン・プランニング……多くの人が一度は試したことのある時間術。
しかし「やってみたけど続かない」「むしろストレスになった」という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
本書『YOUR TIME(ユア・タイム)』の著者・鈴木祐氏は、科学ジャーナリストとして10万本以上の論文を読み解いてきました。その結論はシンプル―― 「万人に効く時間術は存在しない」 ということ。
つまり、時間管理に挫折したのは、あなたがだらしないからではなく、方法が合っていなかっただけなのです。
「予期」と「想起」でわかる時間感覚
鈴木氏は、人の時間感覚を「予期」と「想起」という2つの軸で説明します。
- 予期(未来のイメージ)
これから起こる出来事をどれくらいリアルに感じられるか。 - 想起(過去の記憶)
過去の出来事をどのように思い出し、解釈するか。
この2つのズレによって、同じ時間術が効く人と効かない人が出てきます。
自分のタイプ別・時間術の選び方
1. 予期が薄い人(将来が“他人ごと”に思える)
- 長期プロジェクトが続かない
- 目の前の楽な作業に流されがち
👉 有効な方法:タイムボクシング
時間を「ボックス」として区切り、その中で作業を完結させる。未来の自分を身近に感じられるようになる。
2. 予期が濃すぎる人(未来に縛られすぎる)
- 遊びや休養を後回しにして疲弊
- 「人生を楽しめていない」と感じやすい
👉 有効な方法:プレコミットメント
キャンセルできない予定を先に入れてしまう。旅行や人との約束などを組み込み、強制的に休む仕組みを作る。
3. 想起が誤りやすい人(時間見積もりが下手)
- 「30分でできる」と思ったら2時間かかる
- 非現実的な計画を立てがち
👉 有効な方法:タイムログ
実際の行動を「時間・行動・効果」で記録し、過去のデータをもとに計画を立てる。現実的なスケジュール感が身につく。
4. 想起が否定的な人(過去に縛られる)
- 「前も失敗したからまた無理だ」と考える
- ネガティブな記憶に行動を阻害される
👉 有効な方法:ポジティブ想起トレーニング
成功体験を意識的に思い出す習慣をつくり、前向きな時間感覚を育てる。
科学的な時間術がもたらす変化
本書を通して得られるのは「自分専用の時間術」。一度見つかれば、環境や流行に振り回されることなく一生使えます。
- 自分に合ったスケジュール管理法がわかる
- 無駄な罪悪感や自己否定から解放される
- 生産性だけでなく、幸福感も高まる
鈴木氏は「効率化」だけでなく「退屈の価値」にも触れています。時間の余白を意識的に作ることこそ、健やかに生きる鍵なのです。
まとめ
『YOUR TIME(ユア・タイム)』が伝えるのは――
- 時間術の有効性には“個体差”がある
- 「予期」と「想起」のタイプを知れば、自分に合った方法が見つかる
- 挫折してきたのは、あなたのせいではない
もう「時間術ジプシー」にならなくて大丈夫。あなたに最適な時間術は、科学的に見つけられます。
