円安=日本売りの罠。110円時代が経済を壊した真実
円安は本当に「日本売り」の証拠なのか
近年、1ドルが150円台をつけるなど歴史的な円安が続いている。これを見て「日本売りだ」「国の価値が下がっている」と嘆く声は多い。しかし、為替レートを直近数年だけの動きで判断するのは極めて危険である。 時計の針を1985年の「プラザ合意」まで巻き戻してみよう。当時、1ドル240円台だった為替レートは、各国の協調介入によって一気に140円台へと急激な円高に進んだ。これにより、安価な円を武器に戦後の日本を支えてきた輸出主導のビジネスモデルは崩壊し、狂乱のバブル経済とその後の崩壊へと突き進むことになったのである。
バブル崩壊後に起きた「異常な円高」の悲劇
本来、バブルが崩壊して経済が弱体化した国の通貨は、売られて安くなるのがセオリーである。しかし、当時の日本は逆だった。巨額の借金返済に迫られた企業が、バブル期に買った海外資産を一斉に売却して日本円に換えたため、猛烈な「円買い」が発生したのだ。 結果として、1995年には1ドル79円台という異次元の円高を記録した。その後も長らく「1ドル=110円」程度が平均的な水準として定着したが、これが日本経済にとって最大の不幸であったといえる。当時の経済の実力に全く見合わない「分不相応な円高」が、長きにわたって日本を苦しめることになったからだ。
「110円時代」が引き起こした産業の空洞化
私たちが長年見慣れていた「1ドル110円」の時代。実はこの時、日本の経済は全く正常ではなかった。 過度な円高により、国内でモノを作っても海外で利益が出せない。苦境に立たされた企業は、生き残るために凄惨なリストラとコストカットを繰り返し、生産拠点を次々と海外へ移転させた。これが、日本の産業をスカスカにした「空洞化」の正体である。私たちが「安定している」と錯覚していた円高水準こそが、日本から雇用と投資を奪い、長引くデフレ経済を決定づけた真犯人だったのである。
150円の円安が導く「日本経済の再起動」
翻って現在、1ドル150円近辺という円安水準は、日本経済にとって決して悲観すべきものではない。むしろ、国内でモノを作り、しっかりと利益を出せる「居心地の良い水準」へとようやく戻ってきたといえる。 もちろん、160円を超えるような行き過ぎた円安は家計への負担となるため適度なコントロールは必要だ。しかし現在の水準であれば、企業は国内への投資を増やし、経済を再び力強く回転させることができる。恐れるべきは円安ではなく、かつてのような行き過ぎた円高への逆戻りである。長きにわたる円高の呪縛から解き放たれ、日本は今、真の経済再生に向けたスタートラインに立っているのである。
