外側筋間中隔(LIMS)とは?
外側筋間中隔(Lateral Intermuscular Septum, LIMS) は、上腕骨大結節稜から起こり、外側上顆に向かって走行し、橈骨頭の環状靭帯に付着します。これにより上腕を前方・後方の区画に分けています。
橈骨神経(RN)はこのLIMSと直接接触しながら走行するため、LIMSは潜在的な絞扼部位として注目されます。
病態の発生機序
- 外傷後
上腕骨骨折の治癒過程で、LIMS部での橈骨神経圧迫が起こることがあります。- Chesser & Leslie:上腕骨骨折後3か月でRN麻痺を発症した症例を報告 。
- Bowmanら:骨幹部骨折の数年後に前外側部の慢性疼痛を呈した症例を報告。手術でRNがLIMS入口部で圧迫されていたが、周囲組織には異常なし 。
- 非外傷性
Adolfsson & Nettelbladらの報告では、明らかな線維性アーチは存在しないが、LIMSが橈骨神経を覆いトンネル状構造を形成し、局所腫脹や筋活動によって圧迫が助長されたと考えられました 。
臨床像
- 外傷後に遅発性発症する場合がある(数か月〜数年後)。
- 慢性の前外側部の疼痛が主体で、運動障害や明らかな感覚障害を欠くケースもある。
- 神経伝導検査や画像で明確な異常が得られないこともあり、診断は難しい。
手術と治療上の注意点
- LIMSリリース術により、神経への牽引や圧迫を軽減できる可能性がある。
- ただし、術後必ずしも症状改善が得られるとは限らず、手術適応の慎重な選択が必要。
- 病態によっては、腫脹軽減や三頭筋の後方移動が圧迫を緩和することもある。
まとめ
外側筋間中隔(LIMS)は、橈骨神経の見逃されやすい絞扼部位の一つです。
- 上腕骨骨折後、数か月〜数年経過して症状が出ることがある
- 主症状は慢性的な前外側部痛で、運動・感覚障害が目立たない場合もある
- 手術は有効な場合もあるが、必ずしも確実ではないため慎重な適応判断が必要
橈骨神経障害の臨床において、LIMSでの圧迫も鑑別に入れることが重要です。