迫る医療崩壊。ナフサ不足と問われる日本外交
静かに進行する医療危機
現在、日本の医療現場が密かに、しかし確実に深刻な危機へと直面している。その原因は、中東情勢の悪化に伴う「ナフサ」の供給不足である。ナフサと聞いてもピンとこないかもしれないが、これは医療用プラスチックの欠かせない原料である。注射器や点滴パック、そして何より人工透析に使用される回路など、現代医療を根本から支える素材なのだ。日本はナフサの多くを中東に依存しているが、中東での武力衝突の影響でホルムズ海峡が事実上封鎖状態となり、輸入が停止する事態に陥っている。
供給網の寸断と迫るタイムリミット
政府は東南アジアなど、代替の調達先を確保するとしている。しかし、現実問題としてその東南アジアの国々でさえナフサが不足しており、生産ラインが止まり始めているのが実情である。すでに国内の医療現場では、在庫不足を理由に新規患者の受け入れ制限を示唆する動きすら出始めている。特に、全国に約34万人いるとされる人工透析患者にとって、透析回路の不足は直ちに命に関わる重大な問題である。事態は一刻を争うと言えるだろう。
停滞する日本の外交姿勢
この差し迫った危機に対し、国会でも激しい議論が交わされた。ある野党議員は、事態打開のためにイランとの直接交渉に踏み切るべきだと強く求めた。イラン側も、日本からの提案があれば検討する余地があると示唆している。しかし、高市総理の答弁は「事態の推移を見ながら、適切なタイミングでトップ会談を判断する」という、消極的なものに留まった。アメリカなどの同盟国との関係を重んじるあまり、独自の外交交渉に二の足を踏んでいるように見える。
今求められる現実的なバランス外交
同盟国との協調は重要である。しかし、それによって国民の命が危険に晒されては本末転倒と言わざるを得ない。アメリカの動向を注視するだけでなく、当事国であるイランとも直接対話し、ホルムズ海峡の安全確保に向けた「リアリティ外交」を展開することこそ、独立国家としての責務ではないだろうか。表面的な対策だけでは、根本的な解決には至らない。国民の命を守るため、政府には一刻も早い、実効性のある決断が求められているのである。
