リハビリ関連

膝前部の圧痛点とその評価:IPFを中心とした臨床的アプローチ

taka

はじめに

膝前部痛は臨床で頻繁に遭遇する症状の一つです。その原因は多岐にわたりますが、圧痛点を正確に評価することは疼痛源を特定する上で不可欠です。

膝蓋骨周囲や鵞足腱付着部、内側関節裂隙には数多くの圧痛点が存在しますが、その中でも**最も好発するのは膝蓋下脂肪体(IPF)**です。IPF性疼痛を的確に評価するためには、圧刺激の方法と関節肢位による違いを理解することが重要です。


IPF(膝蓋下脂肪体)の圧痛評価

伸展位での評価

膝関節を伸展すると、IPFは前方に押し出されるため「逃げ場」を失い、圧刺激を確実に加えることができます。したがって、膝前部痛の圧痛評価を行う際は、伸展位での圧迫が最も有効です。

  • ポイント:膝蓋腱直下を的確に圧迫する
  • 評価できる所見:IPFの炎症や瘢痕化に伴う圧痛

屈曲位での評価

膝関節を屈曲すると、IPFは後方(十字靭帯側)へ逃げるスペースが確保されます。このため、屈曲位ではIPFへの直接的な圧刺激は困難となり、圧痛所見を正しく評価できません。


圧痛が屈曲位でも残存する場合の鑑別

もし膝関節を屈曲させても圧痛が認められる場合、それはIPF由来ではない可能性が高いと考えられます。

屈曲位で圧痛を呈する場合に考慮すべき組織は以下の通りです。

  • 膝蓋腱(patellar tendon)
  • 膝蓋支帯(retinaculum)
  • 浅層・深層膝下滑液包(bursa infrapatellaris superficialis / profunda)

これらの組織は屈曲位でも圧迫刺激を受けやすいため、鑑別の参考になります。


臨床での圧痛点評価の流れ

膝前部痛を呈する患者に対しては、以下の手順で圧痛点を確認すると有効です。

  1. 膝関節伸展位での圧迫
    • IPFの圧痛を的確に評価できる
    • 炎症や瘢痕化に伴うIPF性疼痛の確認
  2. 膝関節屈曲位での圧迫
    • IPFへの直接圧は困難
    • 屈曲位でも痛みが残存する場合は膝蓋腱や支帯、滑液包を疑う
  3. 圧痛部位の特定
    • 局所に限局した痛みか
    • 広範囲に広がる痛みか
  4. 動作との関連性確認
    • 階段昇降やしゃがみ込みで増悪する場合 → PF関節やIPF性疼痛を疑う
    • ランニングやジャンプ動作で増悪する場合 → 膝蓋腱炎やスポーツ障害を疑う

IPF性疼痛と臨床的意義

IPFは膝関節の滑走や衝撃吸収を担う重要な組織ですが、炎症・瘢痕化・不安定性などによって疼痛源となりやすい部位です。

  • 膝OA:変性に伴うIPF性疼痛の合併
  • スポーツ障害:ジャンパー膝や膝蓋腱炎と鑑別が必要
  • 術後合併症:関節鏡後のIPF癒着による慢性疼痛

臨床では「膝前部痛=IPF性疼痛」と短絡せず、伸展位・屈曲位での圧痛差を確認することが重要です。


まとめ

膝前部痛の評価において圧痛点の確認は重要です。

  • **膝蓋下脂肪体(IPF)**は最も好発する圧痛点
  • 伸展位での圧迫がIPF評価に有効
  • 屈曲位でも圧痛がある場合は、膝蓋腱・膝蓋支帯・滑液包由来を疑う
  • 圧痛評価は疼痛の発生源を鑑別する第一歩となる

セラピストは圧痛点の評価を適切に行い、疼痛の正確な鑑別と治療戦略の立案につなげる必要があります。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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