リハビリ関連

リハビリにおける患者教育の重要性:姿勢修正とモーターコントロールの実践

患者教育の位置づけ

整形外科リハビリにおいて、患者教育は非常に重要なアプローチの一つです。特に変形性膝関節症では高いエビデンスレベルが示されており、治療の中心的役割を担います。

教育の目的は「患部に負担のかかる姿勢や動作を修正すること」。この指導が適切に行われなければ、治療効果が一時的なものに留まり、再発や慢性化を招くリスクが高まります。


姿勢修正の2つの要素

不良姿勢を修正する際には、以下の2つの要素を考慮する必要があります。

  1. 可動性(Mobility)
  2. モーターコントロール(Motor Control)

可動性に問題がない場合

正しい姿勢を「意識するだけ」で修正可能な場合、その患者の可動性には大きな問題がないと判断できます。この場合、介入の焦点は モーターコントロール に移ります。


モーターコントロールへのアプローチ

モーターコントロールとは「どの筋肉をどのように使うか」という運動制御のことです。

例:座位で骨盤後傾を修正する場合

  • 脊柱起立筋群で骨盤を立てる
  • 腸腰筋で骨盤を立てる

👉 どちらを使うかで、負担のかかる筋肉は大きく異なります。

さらに重要なのは、意識的に変えられても 無意識に新しいパターンを定着させるには反復が必要 だという点です。研究では、少なくとも2500回の反復が必要とされています。臨床では、この「反復練習」をいかに生活の中に組み込むかが課題となります。


姿勢は変えられるのか?

不良姿勢を修正することは大切ですが、現実には 姿勢の多くはDNAによって規定 されており、完全に普段の姿勢を変えることは困難とも言われています。

👉 そこで重要になるのが 環境調整 です。


環境調整によるアプローチ

姿勢を「意識」で変えるのではなく、「環境を変える」ことで無理なく修正する方法です。

  • 腰椎屈曲が強い座位のケース
     → サポートチェアを使用することで骨盤が自然に立ち、腰椎を伸展位に保持できる。
  • 長時間座位による負担
     → スタンディングデスクを導入し、座位姿勢そのものを減らす。

このように、環境の工夫は「患者の努力に依存しない」点が大きな利点です。結果として習慣化しやすく、再発予防につながります。


患者教育の実践ポイント

  1. 患者自身に理解させること
     なぜその姿勢や動作が負担になるのかを説明する。
  2. 具体的な修正方法を提案すること
     筋トレやストレッチだけでなく、日常生活の環境をどう整えるかを指導する。
  3. モーターコントロールを繰り返し練習させること
     反復を生活の一部に組み込み、習慣化を図る。
  4. 成功体験を積ませること
     「この姿勢で座ると楽になった」と感じさせることで、モチベーションが高まる。

まとめ

  • 患者教育は整形疾患リハビリで高いエビデンスを持つ重要アプローチ
  • 姿勢修正には「可動性」と「モーターコントロール」の2要素を評価する必要がある
  • DNAに規定された姿勢は変えにくいため、「環境調整」が効果的
  • サポートチェアやスタンディングデスクの導入など、実生活に即した工夫が有効
  • 教育は一方的ではなく、理解・実践・反復・習慣化のサイクルを重視する

患者教育は「補助的手段」ではなく、治療の根幹を支える戦略です。臨床家が患者と共に生活環境を整えていくことで、より持続的な治療効果が得られるでしょう。

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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。