Saturday night palsyとは?
“Saturday night palsy” は、橈骨神経(RN)が上腕で直接圧迫を受けることにより発生する末梢神経麻痺です。
典型的には、アルコールで泥酔した人が椅子の背もたれに腕を垂らしたまま眠り込み、長時間圧迫されることで発症します。
圧迫部位は多くの場合、橈骨神経が上腕骨後面を走行する 橈骨溝(radial groove) です。
類似の病態:Honeymoon palsy
同様のメカニズムで発症するものに「Honeymoon palsy(ハネムーン麻痺)」があります。
これは「隣で寝ている相手が腕の上に長時間乗ってしまう」ことで橈骨神経が圧迫され、同様の症状を呈するものです。
症状
症状は圧迫の程度によって異なります。
- 指の細かい動きの障害
- 手関節・手指伸展の弱化(典型的にはwrist drop)
- 完全麻痺に至る場合もある
- 感覚障害は手背橈側に出現することがある
診断のポイント
橈骨神経は橈骨溝で比較的浅い位置を走行するため、超音波検査(USG) が有効とされています。
- 高解像度USGにより、神経の腫大や低エコー変化を確認可能
- 急性発症例でも短時間で評価でき、臨床的に有用
加えて、反復動作や動脈の拍動による圧迫(punched nerve syndrome)が原因となることもあり、この場合もUSGで血管の拍動と神経への直接圧迫が可視化されると報告されています。
治療と予後
- 治療の基本は保存療法
- 多くは 2〜3か月で自然回復
- 重度の症例でも 6か月程度で回復することが多い
- 予後は概して良好
臨床家にとって重要なのは、自然経過で回復する可能性が高い一方で、鑑別疾患として 頸椎神経根症や他の末梢神経障害を除外する必要があるという点です。
まとめ
Saturday night palsy(サタデーナイト麻痺)は、橈骨神経が上腕で圧迫されることで発生する急性神経障害です。
- 原因は「長時間の外的圧迫」
- 典型的には橈骨溝で発症
- 診断には超音波が有用
- 予後は良好で、多くは保存療法で回復
日常臨床では、外傷性や術後合併症による橈骨神経麻痺との鑑別を行いながら、回復経過を評価していくことが求められます。