筋膜の4つの分類
筋膜(fascia)は、従来の解剖学では「筋や骨を包む補助的な組織」として軽視されがちでした。
しかし近年では、身体の連続性を保つ重要な構造として再評価されています。筋膜は大きく以下の4つに分類されます。
- 浅筋膜(superficial fascia / pannicular fascia)
- 皮下組織に相当し、皮膚のすぐ下に広がる
- 脂肪細胞を多く含む疎性結合組織
- 体全体を覆う「柔らかい包装材」として機能
- 深筋膜(deep fascia / investing fascia)
- 全身の筋骨格系を覆う一続きの層
- 骨格筋を包む筋外膜(epimysium)、腱を包む腱膜(peritenon)、靭帯や骨膜(periosteum)と連続
- 部位により 軸筋膜(axial fascia) と 体肢筋膜(appendicular fascia) に分けられる
- 髄膜(meninges)
- 中枢神経系(脳・脊髄)を包む膜
- 臓器を包む膜
- 胸膜、腹膜など、胸腔・腹腔の内臓を覆う膜
胸腰筋膜 ― 深筋膜の代表例
深筋膜の中でも、臨床で特に注目されるのが 胸腰筋膜(thoracolumbar fascia) です。
- 構造:多層性(後葉・中葉・前葉の3層)を持つ
- 範囲:
- 頸部では薄く「項筋膜」として固有背筋を覆う
- 胸部では肋骨角に付着し、背筋を覆う
- 腰部では肋骨がないため、固有背筋を「鞘状」に包み込み、さらに腰方形筋まで覆う
- 特徴:交織密性結合組織であり、多方向の張力に適応する
👉 胸腰筋膜は、体幹の安定性・運動連鎖・腰痛の病態と深く関わる部位として臨床上も重要です。
筋膜が見落とされてきた理由
従来の解剖学分類では、運動器系は以下のように分けられていました。
- 骨格系
- 関節・靭帯系
- 筋系
この枠組みでは「筋膜」は独立した系統として扱われず、骨・筋・靭帯をつなぐ結合組織として十分に注目されてきませんでした。
しかし実際には、筋膜は 身体を一つのネットワークとして機能させる鍵であり、疼痛や可動域制限、姿勢制御に深く関与します。
まとめ
- 筋膜は 浅筋膜・深筋膜・髄膜・臓器膜 に分類される
- 深筋膜の中でも 胸腰筋膜 は体幹安定性に直結し、臨床的に重要
- 筋膜は「単なる補助組織」ではなく、身体全体をつなぎ、力と情報を伝えるネットワークである
👉 筋膜の理解は、筋膜リリース・運動療法・疼痛治療の基礎となります。